[2019年4月25日]次世代CT技術の最前線を知る~立位型CT装置について~

慶應義塾大学病院 三浦 茂樹

 去る2019年4月25日にて、第105回イベントを開催致しました。今回は立位型CT装置をテーマに、慶應義塾大学医学部リサーチパーク放射線診断科研究室より、プロジェクトの中核を担っておられる、山田稔先生にお話いただきました。

 立位型CT装置は、昨年JRCのランチョンセミナーで初公開され、大いに反響を呼びました。講義ではCT装置の歴史的変遷を振り返りながら、開発に到った経緯や、設置後の検証、実際の臨床例の提示をしていただきました。

 まず開発の背景として、2004年の64列CTが登場して以来、この10数年来のCT開発競争に伴う目覚しい発展があった事が挙げられました。確かに私が就職した頃はシングルスライスがまだ多く見られていましたが、16列マルチスライスの登場からの64列、そして64列の多様化まで非常に短期間であったように思います。

 また多列化だけでなく、逐次近似法を中心に画像再構成法にも変革があり、この10年間はCT分野の研究が非常に活発化した期間でした。この画像診断の変遷について、山田先生の振り返りの中でも、CTによる造影X線検査の置換や、撮像高速化、低被ばく化等、立位CT開発の下地が出来てきていたと理解できました。

 そして、立位CTの開発に到る経緯の中で特筆すべきは、臨床上の立位画像診断の有用性でした。これまで画像検査は仰臥位が中心であり、胸腹部診断或いは関節への荷重診断に用いられる単純X線以外では立位検査は行われてきませんでした。

 しかし、人体は生活時間の大半が立位中心である事からも、多くの機能情報は立位で評価されるものであり、重力下で初めて明らかにされる病態も少なくありません。臨床例では膀胱脱をその一例であると示されていましたが、今回提示していただいた調査結果の中で、脳が立位により変化するという事実は興味深く、これまでの解剖学や画像診断学に重要なインパクトを与える事が考えられます。

 立位CTによる人体機能の究明、更なる病態解明という可能性を感じられる講演でした。

 本講演では、立位診断という新たな領域を提示していただきました。しかし、私が放射線技師として、印象的であった事がもう一点、基礎的な検証が重要であると語られていた事です。

 前半のスライドでは、物理的特性が従来の据置型と全く変わらないという事実が無ければ、立位診断というインパクトの信憑性が失われるという事を示していました。

 山田先生も述べられたとおり、我々現場の放射線技師は、新しい技術に対し検証を行う事でエビデンスを支えていると思います。今後も放射線技術科学は時代と共に革新を続けると思われますが、本講演を通して、より科学的に学術的見地から臨床を支える技師の役割を再認識しました。

 末筆ではありますが、講演いただいた山田先生、ご協力いただいた関係各署の方々に厚くお礼申し上げます。