[2019年3月13日]心臓遅延造影CTについて学ぶ:造影プロトコルから画像解析まで

杏林大学医学部付属病院 福島啓太

 2019年3月13日(水)に第104回TCTT主催講義「心臓遅延造影CTについて学ぶ:造影プロトコルから画像解析まで」が文京区本郷の根本杏林堂で開催されました。心臓CTにおける従来の形態的評価に留まらず、機能的評価に一石を投じる最新の技術について解説頂きました。

 前半は株式会社根本杏林堂の弓場孝治様に、心筋遅延造影CTについて概要から実臨床に至るまで詳細にプレゼンテーション頂きました。

 遅延造影といえば、心臓MRIのルーチン検査として定着していますが、これをCTで行うという新たな手法です。

 MRIのLGE (late gadolinium enhancement)に対してLIE (late iodine enhancement)とされる本手法は先行研究において、すでに虚血疾患におけるLGEとの相関があると発表がありました。

 実臨床に取り入れておられるご施設のお話では、低電圧撮像や造影剤注入量、逐次近似再構成等の検討が必要であるものの、CCTA (coronary CT angiography)、LIEに加え負荷/安静時の撮像も加えた検査フローを構築され、まさにCT検査のみのone stop shoppingの可能性を感じました。

 さらにLIEで取得したデータの活用として、こちらもMRIに代表されるT1 mappingやECV(extracellular volume function)といった心筋組織の繊維化評価をCTで行うという手法もご発表いただきました。LIEの定性的評価に加え、ECVの定量的評価が付加されることで、心筋バイアビリティ評価を総合的に可能にするツールとして期待されます。

 後半はアミン株式会社の帆足正勝様に前述の手法をpost processの面から詳細にプレゼンテーション頂きました。LIEにおけるサブトラクション過程の非剛体レジストレーションの有用性は、ハード面で不足するミスレジストレーションやコントラストをソフト面で補う点で、LIEをより明瞭に評価する技術として不可欠と感じました。

 本講義を拝聴し、昨今の心臓CTの進歩に驚いたとともに、今後の方向性を示唆していただいたと思います。お話いただいた心臓CTでのone stop shoppingは非常に魅力的で、核医学や血管撮影のない施設でも多くの情報を提供できるものです。

 同時に、汎用性の高い手法となって広まるためには、このような最新の技術や知見を取り入れて準備しておくことが大切だと思いました。

 最後に、お忙しい中講師をお引き受けいただいた弓場様、帆足様また会場提供、準備頂いた根本杏林堂、アミン株式会社の皆様に厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。