[2019年2月27日]「最新の画像再構成技術deep learning reconstruction (DLR) “AiCE”について」

東京慈恵会医科大学附属柏病院  梁野 伸貴

 2019年2月27日(水)に、第103回TCTT主催講義「最新の画像再構成技術deep learning reconstruction (DLR) “advanced intelligent clear-IQ engine (AiCE)”について」が東京都診療放射線技師会研修センターにて開催されました。

 昨年行われたRadiological Society of North America (RSNA) においてもartificial intelligence (AI)に関連した研究は最も注目度が高い分野の一つであります。しかし、このAIという技術がどのようなものなのか、なぜ今AIが注目されているのかなど基本的な学習する機会はなかなか得られない状況でした。

 今回、CT装置の臨床機に世界で初めて搭載されたキヤノンメディカルシステムズ社のDLRである “AiCE”について、アルゴリズム概要と物理特性、および臨床画像を同社の伊藤雄也先生を招き、ご紹介して頂きました。

 AiCEはdeep learningを用いて設計したCTの最新の画像再構成技術で、ノイズ成分と信号成分を識別する処理を用い、空間分解能を維持したままノイズを選択的に除去することが可能と謳われています。AiCEを紹介する中で、まずAIについて基本的なところからお話し頂けました。

 AIとは人工知能、人間が行っている知的行動を機械がそれにかわり行動することというおおまかな定義がされています。多方面にわたるAI研究の一分野に機械学習があり、文字通り人間が持つ“学習“する過程を”機械“が行う研究分野です。

 具体的には、サンプルのデータの特徴や規則性、ルールといった条件をアルゴリズム化し、アルゴリズムに則ってコンピュータによるデータの自動的な分類や回帰(予測)などを行います。機械学習の中でさらにニューラルネットワークと呼ばれる手法あります。

 これは、入力層と出力層、それをつなぐ中間層による構成で中間層に様々な情報を組み込むことで正確性が向上します。ニューラルネットワークの中間層を多層化して、より発展させたものがdeep learningです。

 近年AI技術が発展した背景には、graphics processing unit (GPU)のハードウェアの進化とともにこのdeep learningのアルゴリズムの進化が大きいということでした。このような聞きなれない用語の定義を知っておくことは新たな画像再構成技術を理解するうえで非常に重要であると感じました。

 AiCEでは入力データに低線量から高線量の幅広い線量帯の画像を使用し、学習の肝となる教師データには高空間分解能かつ低ノイズなデータ(advanced model based iterative reconstruction (MBIR))を用いています。この入力データと教師データの差分がより少なくなるように各層のニューラルネットワークのパラメータを最適化します。

 このように膨大なデータを用いてノイズかシグナルを判別するための学習を行う事で、MBIRより高速で大幅なノイズ低減効果と高い空間分解能の維持効果を精度高く両立させているとの事でした。実際の物理評価のデータを比較しても、良好な結果が示されていました。

 現在使用可能な部位について,Aquilion Precisionでは軟部組織に限定的であるが、Aquilion ONE/GENESIS Editionには軟部組織・心臓・肺での標準装備が開始されており、今後は様々な領域で使用可能となるとの事でした。

 大幅なノイズ低減効果と高い空間分解能の維持効果を両立する新しい再構成法として期待が大きいが、我々の役割として臨床においてどのように最適な撮影条件を設定していくか、新たな診断価値をどう見出していくか等、取り組むべき課題が見えたセミナーとなりました。

 最後に、ご多忙の中、ご講演いただきました伊藤先生に深く感謝申し上げます。